学生時代にアメリカに留学していた頃、そこら中にあるチャイニーズレストランにはよくお世話になりました。中華はお米がメインで他の料理よりは馴染みやすく、毎週のように通っていました。
アメリカの中華料理屋さんには日本で慣れ親しんだ料理もありますが、まったく聞いたことのない料理も多く、全体的に脂っこい料理が多く、ジャンクな感じです。その中で、変わった名前で気になっていたのがGeneral Tso’s Chicken。日本語でツォ将軍のチキンです。
鶏肉を一旦油で揚げて、甘辛いタレを絡めた料理で、どこのレストランでもメニューにあり、親しみやすい味で、よく注文していました。日本では見たことがなく、ずっと気になっていたので、調べてみました。
アメリカの公共ラジオ、NPRで2007年の記事を見つけました。その記事によると、”General Tso’s Chicken”は世界で一番有名な湖南料理なのに、湖南では全く知られていないそうです。世界で一番有名、とのことですが、少なくともアメリカでは、かも知れません。”General Tso’s”は中国清朝末期の湖南生まれの大臣、左宗棠のことだそうで左将軍の好物だったので、レシピに名前が付けられた、らしいですが、記録はまったく無いそうです。
ちょっと怪しく聞こえますが、”General Tso’s Chicken”のレシピの歴史は意外にはっきりしていて、この記事では発明したシェフPeng Chang-kueiにインタビューされていました。
このレシピの由来は中国とアメリカへの移民の歴史にあります。Peng Chang-kueiシェフは1919年に湖南地方で生まれました。順調にシェフのキャリアを歩み、第二次世界大戦が終わるころには蒋介石の国民党のパーティの料理を作るシェフになっていました。国民党は第二次世界大戦後の国共内戦で毛沢東の共産党に負け、台湾に逃れます。その際にPeng Chang-Kueiシェフも一緒に台湾に逃れました。台湾でもシェフとして働く中、”General Tso’s Chicken”を発明していたようです。
1973年にPeng Chang-Kueiシェフはニューヨークに移り、湖南料理のレストランをオープンします。国連本部に近く、アメリカの国務長官ヘンリー・キッシンジャーも通っていたそうです。ニューヨークのレストランで、Peng Chang-Kueiシェフは中国人以外の舌にあうように、新たなレシピを発明したり、既存のレシピを改良したりしていました。その中で生まれたのが、現在の”General Tso’s Chicken”です。当初は湖南料理の特徴の重厚さ、酸味、辛味、塩味が出ていた料理でしたが、(アメリカ人好みの?)甘みが強いレシピに変化していったようです。Peng Chang-Kueiシェフは80年代に台北に戻りますが、彼の弟子、そして、他のチャイニーズレストランのシェフによって彼のレシピが全米に伝えられていったそうです。後日談として、Peng Chang-Kueiシェフは故郷湖南地方にもレストランをオープンし、”General Tso’s Chicken”もメニューにあったそうです。レストラン自体は長く続きませんでしたが、レシピは他のシェフにも伝わり、湖南料理として世界に知られていくようになったそうです。
今回、日本で簡単に手に入る食材で作った”General Tso’s Chicken”(左将軍のチキン)レシピを紹介します。
材料(2人分)
鶏もも肉 | 200g |
片栗粉 | 適量 |
鶏肉の調味料 | |
紹興酒 | 大さじ1 |
卵白 | 1個分 |
塩 | 少々 |
ゴマ | 少々 |
青ネギ | 大さじ1 |
ソース | |
醤油 | 大さじ3 |
米酢 | 大さじ1 |
オイスターソース | 大さじ1/2 |
砂糖 | 大さじ2 |
白ネギ | 半分 |
唐辛子 | 少々 |
にんにく | 1個 |
水溶き片栗粉 | 適量 |
作り方
1.鶏もも肉は3cmくらいの大きさに切り分け、塩をし、紹興酒、卵白を混ぜてよく揉み込み、10分ほど置いて、片栗粉と小麦粉をまぶします。
2. 鶏肉に片栗粉を多めに付けて、揚げます。(この片栗粉がとろみになります)
3. 鶏肉の唐揚げが出来たら、油を切ります。
4. 中華鍋に油を少し熱し、みじん切りにしたにんにく、ねぎ、唐辛子を入れ、香り出てくるまで炒めます。
ソースの材料(オイスターソース、醤油、米酢、砂糖、水)を入れて少し煮詰めます。
5. 鶏肉を入れ、たれを絡めて、青ネギのみじん切りをいれて完成です。ご飯と盛り付けて、ゴマをかけます。
卵白の衣でサクサクな鶏の唐揚げにとろっとした甘辛の味がご飯にあいます。ブロッコリーを足しても美味しいです。